■お蔵入りコラム1(第5章末)  材料力学の講義の際,「ゴムを引っ張ったことがあるやろ」って聞く.聞かれた学生さんはポカーンとしている.引っ張ったことがあるのかないのかさっぱりわからない.それとも,強面のひげオヤジがわけのわからんあたり前のことを聞いていて,この講義とどんな関係があるんだろうと真剣に考えているのだろうか.引っ張ったら伸びるのがあたり前やねん.せやけどな,そのあたり前のことを数式なんかで表現できたらええと思わへんか?伸びるだけやのうて幅も縮むねんで.これも数式で表現できたらええやんか.  材料力学は,物体にはたらいた力に対して内部にどんな応力が発生して,どれだけ変形するかを計算するためのツールのようなものである.これまで学んだことでも,簡単なものなら設計できる.このあとは少し面倒くさくなるかもしれないが,もう少し付き合っていけば,もっといろいろなものが設計できるようになるぞ. ■お蔵入りコラム2(第10章末)  「破損」という言葉とよく似た言葉で「破壊」という言葉がある.両方ともある性質を失うことには変わりないが,大きく違う点がある.破損というのはここで説明したように,材料の弾性的性質が損なわれることで,簡単にいえば,応力とひずみの関係にフックの法則が成立しなくなり,外力を取り除いても元の状態に戻らない,つまり,永久ひずみが残るような状態をいう.永久ひずみが残っても部材そのものは機能し続ける.一方,破壊は部材そのものが分断されて機能できなくなる状態をいう.  それでは,なぜ,弾性破損が重要なのだろうか.それは,いったん弾性破損が発生した状態で外力が作用し続けると,部材はわずかな外力でも大きな塑性ひずみを生じて変形が進行してしまうためである.変形が進行すると,材料の基本的な性質(第2章で述べた)から,最終的に部材は分断されてその機能すら果たせなくなる.そのため,設計の際には弾性変形の範囲内で応力が変化することが望ましいわけである.弾性変形の範囲内であれば,変形した部材でも外力を取り除けば元に戻るので安全なのだ. ■お蔵入りコラム3(12.1節末)  この章で述べるトラスやはりについてのマトリックス構造解析法の定式化は,ほかの専門書の説明とはかなり異なっているが,結果はまったく同じである.本書を書くにあたって,ここまで読み進めてきた読者のもっている知識の範囲内でできる定式化をしようと思い,このような形になった.実は,最初は「大きな制約だな」と思っていたが,実際に式を作っていくと,このほうが自然に理解できるかもしれないと感じた.  本書の読者はここで初めてマトリックス構造解析に触れるだろうから,比較のしようがないかもしれないが,これを機会に,マトリックス構造解析に関するほかの専門書を読んでみたり,より進んで有限要素法を学んでみたりしてはどうだろうか.